10月12日は松尾芭蕉の命日。辞世の句と松尾芭蕉が詠んだ有名な俳句50作品

旧暦10月12日は松尾芭蕉の命日です。俳句を高度な文芸まで高めた功績を称え、松尾芭蕉の命日(10月12日)は、芭蕉忌(ばしょうき)時雨忌(しぐれき)桃青忌(とうせいき)翁忌(おきなき)とも呼ばれ、俳句では冬の季語にもなっています。松尾芭蕉の辞世の句と、松尾芭蕉が詠んだ俳句を季節ごとに50作品選りすぐりました。ちなみに松尾芭蕉の俳句で有名なのは「閑かさや岩にしみ入る蝉の声」――

 

旧暦10月12日は松尾芭蕉の命日

旧暦10月12日は、江戸前期の俳人・松尾芭蕉(まつおばしょう)の命日です。寛永21年(1644年)に伊賀国(いがのくに)現在の三重県伊賀市に生まれ、元禄7年(1694年)10月12日に、大阪御堂筋で病死。享年51。松尾芭蕉のお墓は、滋賀県大津市の義仲寺(ぎちゅうじ)にあります。

松尾芭蕉の命日は芭蕉忌とも呼ばれ俳句では冬の季語

俳句では、松尾芭蕉の命日(10月12日)は、「芭蕉忌」(ばしょうき)「時雨忌」(しぐれき)「桃青忌」(とうせいき)「翁忌」(おきなき)などと呼ばれ、冬の季語になっています。旧暦10月12日は新暦だと11月28日ごろにあたるので、松尾芭蕉の命日(旧暦10月12日)=芭蕉忌は冬の季語になっています。

「時雨忌」は旧暦10月の別名「時雨月」にちなんで。「桃青忌」は、松尾芭蕉が「桃青」という俳号を使っていた時期があることから。「翁忌」は、「芭蕉翁」と呼ばれていたことによります。

松尾芭蕉の命日を季語にして詠まれた俳句には、●芭蕉忌…芭蕉忌やはなればなれにしぐれをり(ばしょうきや はなればれに しぐれおり)加藤楸邨(かとうしゅうそん)●時雨忌…時雨忌や林に入れば旅ごころ(じくれきや はやしにいれば たびごころ)石田波郷(いしだ はきょう)●桃青忌…桃青忌夜は人の香のうすれけり(とうせいき よはひとのかの うすれけり)●翁忌…翁忌や紅葉日和の伊賀盆地(おきなきや もみじびよりの いがぼんち)深川正一郎(ふかがわしょういちろう)――などがあります。

 

松尾芭蕉の辞世の句

松尾芭蕉の辞世の句は「旅に病で夢は枯野をかけ廻る」(たびにやんでゆめはかれのを かけめぐる)。病没するさいに病床で弟子に書き取らせたと言われています。また、死の三日前に病床で詠んだ「清滝や波に散り込む青松葉」(きよたきや まみにちりこむ あおばじょう)を松尾芭蕉の辞世の句とする説もあります。

松尾芭蕉の代表作ともいえる有名な俳句

松尾芭蕉の代表作ともいえる名句は、●閑かさや岩にしみ入る蝉の声(しずかさや いわにしみいる せみのこえ)●夏草や兵どもが夢の跡(なつくさや つわものどもが ゆめのあと)●秋深し隣は何をする人ぞ(あきふかし となりはなにを するひとぞ)●古池やかはづ飛びこむ水の音(ふるいけや かわずとびこむ みずのおと)――などの俳句が有名。

松尾芭蕉が詠んだ季節の俳句<50作品>

松尾芭蕉が詠んだ有名な俳句を季節ごとに◇春◇夏◇秋◇冬◇新年―― 10句ずつ全部で50作品を選りすぐりました。●季語(読み方)…俳句(ふりがな)という形で記してあります。手紙やはがきの挨拶文や書き出しなどにも使えます。

松尾芭蕉が詠んだ春の俳句

柳の芽

●春立つ(はるたつ)…春たちてまだ九日の野山かな(はるたちて まだここのかの のやまかな)●梅が香(うめがか)…梅が香にのつと日の出る山路かな(うめがかに のっとひのでる やまじかな)●雛の家(ひなのいえ)…草の戸も住み替はる代ぞ雛の家(くさのとも すみかわるよぞ ひなのいえ)●雲雀(ひはり)…雲雀より空にやすらふ峠かな(ひばりより そらにやすらう とうげかな)●芽独活(めうど)…雪間より薄紫の芽独活かな(ゆきまより うすむらさきの めうどかな)

●菫(すみれ)…山路来てなにやらゆかしすみれ草(やまじきて なにやらゆかし すみれぐさ)●薺(なずな)…よく見れば薺花さく垣根かな(よくみれば なずなはなさく かきねかな)●柳(やなぎ)…八九間空で雨降る柳かな(はっくけん そらであめふる やなぎかな)●山吹(やまぶき)…ほろほろと山吹散るか滝の音(ほろほろと やまぶきちるか たきのおと)●蛙(かわず)…古池やかはづ飛びこむ水の音(ふるいけや かわずとびこむ みずのおと)

松尾芭蕉が詠んだ夏の俳句

紫陽花


●紫陽花(あじさい)…紫陽花や藪を小庭の別座敷(あじさいや やぶをこにわの べつざしき)●蝸牛(かたつむり)…かたつぶり角ふりわけよ須磨明石(かたつぶり つのふりわけよ すまあかし)●田植(たうえ)…風流の初やおくの田植うた(ふうりゅうの はじめやおくの たうえうた)●夏草(なつくさ)…夏草や兵どもが夢の跡(なつくさや つわものどもが ゆめのあと)●雲の峰(くものみね)…雲の峰いくつ崩れて月の山(くものみね いくつくずれて つきのやま)

●涼し(すずし)…このあたり目に見ゆるものは皆涼し(このあたり めにみゆるものは みなすずし)●夏の月(なつのつき)…たこつぼやはかなき夢を夏の月(たこつぼや はかなきゆめを なつのつき)●心太(ところてん)…清滝の水汲みよせてところてん(きよたきの みずくみよせて ところてん)●蝉(せみ)…閑かさや岩にしみ入る蝉の声(しずかさや いわにしみいる せみのこえ)●秋近し(あきちかし)…秋近き心の寄るや四畳半(あきちかき こころのよるや よじょうはん)

松尾芭蕉が詠んだ秋の俳句

萩

●秋涼し(あきすずし)…秋涼し手毎にむけや瓜茄子(あきすずし てごとにむけや うりなすび)●朝顔(あさがお)…朝顔に我は飯くふ男かな(あさがおに われはめしくう おとこかな)●萩(はぎ)…白露をこぼさぬ萩のうねりかな(しらつゆを こぼさぬはぎの うねりかな)●蟋蟀(きりぎりす)…淋しさや釘にかけたるきりぎりす(さびしさや くぎにかけたる きりぎりす)●名月(めいげつ)…名月や門にさし来る潮がしら(めいげつや かどにさしくる しおがしら)

●蜻蛉(とんぼ)…蜻蛉やとりつきかねし草の上(とんぽうや とりつきかねし くさのうえ)●秋風(あきかぜ)…秋風や藪も畠も不破の関(あきかぜや やぶもはたけも ふわのせき)●秋の暮(あきのくれ)…この道や行く人なしに秋の暮(このみちや ゆくひとなしに あきのくれ)●白菊(しらぎく)…白菊の目に立てて見る塵もなし(しらぎくの めにたててみる ちりもなし)●秋深し(あきふかし)…秋深し隣は何をする人ぞ(あきふかし となりはなにを するひとぞ)●行秋(ゆくあき)…蛤のふたみに別れ行く秋ぞ(はまぐりの ふたみにわかれ ゆくあきぞ)

松尾芭蕉が詠んだ冬の俳句

雪

●初時雨(はつしぐれ)…初しぐれ猿も小蓑をほしげなり(はつしぐれ さるもこみのを ほしげなり)●冬日(ふゆひ)…冬の日や馬上にこほる影法師(ふゆのひや ばじょうにこおる かげぼうし)●寒し(さむし)…塩鯛の歯ぐきも寒し魚の店(しおだいの はぐきもさむし うおのたな)●葱(ねぎ)…葱白く洗ひたてたる寒さかな(ねぎしろく あらいたてたる さむさかな)●枯野(かれの)…旅に病んで夢は枯野をかけ廻る(たびにやんで ゆめはかれのを かけめぐる)

●冬籠(ふゆごもり)…冬籠りまたよりそはん此はしら(ふゆごもり またよりそわん このはしら)●年の市(としのいち)…年の市線香買に出でばやな(としのいち せんこうかいに いでばやな)●年忘(としわすれ)…人に家を買はせて我は年忘れ(ひとにいえを かわせてわれは としわすれ)●年暮るる(としくるる)…年暮ぬ笠きて草鞋はきながら(としくれぬ かさきてわらじ はきながら)●探梅(たんばい)…香を探る梅に蔵見る軒端哉(かをさぐる うめにくらみる のきばかな)

松尾芭蕉が詠んだ新年の俳句

●蓬莱(ほうらい)…蓬莱にきかばや伊勢の初だより(ほうらいに きかばやいせの はつだより)●門松(かどまつ)…門松やおもへば一夜三十年(かどまつや おもえばいちや さんじゅうねん)●筆始(ふではじめ)…大津絵の筆の始めは何仏(おおつえの ふでのはじめは なにぼとけ)●嫁が君(よめがきみ)…餠花や簪にさせるよめが君(もちばなや かざしにさせる よめがきみ)●雑煮(ぞうに)…今朝買はん葎の宿の雜煮椀(けさかわん むぐらのやどの ぞうにわん)

●恵方(えほう)…惠方から曳くやことしも牛の玉(えほうから ひくやことしも うしのたま)●新年(しんねん)…似合しや新年瓢米五升(にあいしや しんねんひさご こめごしょう)●若菜(わかな)…あらがねの蕪召されて若菜哉(あらがねの かぶらめされて わかなかな)●橙(だいだい)…橙や伊勢の白子の店ざらし(だいだいや いせのしらこの たなざらし)●歯朶(しだ)…誰が聟ぞ歯朶に餅おふうしの年(たがむこぞ しだにもちおう うしのとし)

正岡子規の命日小林一茶の命日与謝蕪村の命日

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