サラリーマンやOLなど会社員でも自己負担した一部の費用(特定支出)は、条件を満たしていれば、確定申告で必要経費として認められるので、税金を取り戻すことができます。以下、給与所得者の特定支出控除について、分かりやすく解説していきます。
必要経費として認められる費用
必要経費として認められる特定支出は、①通勤費 ②転居費 ③研修費 ④資格取得費 ⑤帰宅旅費 ⑥勤務必要経費――の6項目。勤務必要経費は ◇図書購入費 ◇衣服費 ◇交際費の 3項目。特定支出の内容は以下の表のとおりです。【 通勤費 】通勤のために必要な公共交通機関の交通費。グリーン車料金は対象外。マイカー通勤が認められている場合のガソリン代・高速料金は可 |
【 転居費 】転勤に伴う転居のために必要な家財運送費や運賃・宿泊費など。引っ越しの荷造りで使う梱包材料費や運送に伴う損害保険料なども認められます。転居先の家の畳替えや壁の塗り替えなどの費用は対象外 |
【 研修費 】仕事に直接必要な技術や知識を得ることを目的とした研修会や講習会の参加費用。交通費も対象 |
【 資格取得費 】仕事に直接必要な資格を取得するための費用。弁護士・公認会計士・弁理士・税理士・医師・歯科技師などの資格取得費も認められます。 |
【 帰宅旅費 】単身赴任者などの勤務地や居所から自宅への帰宅旅費(1か月に3往復まで)。1か月に3往復を超えた分(4往復目以降)は対象外。グリーン車やファーストクラスなどの費用は認められません。 |
【 勤務必要経費(図書費) 】仕事に関する専門書・雑誌・業界紙・定期刊行物などの購入費用 |
【 勤務必要経費(衣服費) 】制服・事務服・作業服など職場で着用することが義務づけられている衣服の購入費。スーツも職場や仕事で着用が慣行になっている場合は可。私服については仕事先から特定の衣服の着用を求められていない場合は不可 |
【 勤務必要経費(交際費) 】得意先や仕入先など仕事上関係のある者に対する接待・供応・贈答費用。職場内の親睦会などの費用は対象外 |
勤務必要経費については、特定支出として認められるのは、図書購入費・衣服費・交際費を合わせて合計65万円までとなります。
特定支出控除の適用判定基準
特定支出控除が適用される判定基準は年収によって異なります。特定支出控除の適用判定基準
・年収が1,500万円以下の場合は、その年の給与所得控除額の二分の一を超えている
・年収が1,500万円超の場合は、特定支出の合計額が125万円を超えている
・年収が1,500万円超の場合は、特定支出の合計額が125万円を超えている
年収1,500年以下・年収1,500万円超どちらの場合でも「 超えている部分の金額 」を給与所得控除後の所得金額から差し引くことができます。その金額と、給与所得控除額(※)を年収から差し引いた金額が、特定支出控除を適用する場合の「給与所得額」となります。
特定支出控除を適用する場合の給与所得額の計算方法
年収1,500万円以下の場合
給与所得額=年収(源泉徴収票の支払金額)- 給与所得控除額(※)+(特定支出合計額-給与所得控除額の1/2)年収1,500万円超の場合
給与所得額=年収(源泉徴収票の支払金額)- 給与所得控除額(※)+(特定支出合計額-125万円) ※特定支出合計額は125万円を超えていること※ 給与所得控除額の計算方法は次のとおりです。
180万円以下 | 年収×40%(年収65万円未満の場合は65万円) |
180万円超~360万円以下 | 年収×30%+18万円 |
360万円超~660万円以下 | 年収×20%+54万円 |
660万円超~1,000万円以下 | 年収×10%+120万円 |
年収1,000万円超~1,500万円以下 | 年収×5%+170万円 |
年収1,500万円超 | 245万円(245万円が上限) |
特定支出控除に必要な書類
確定申告で特定支出控除を行なう場合の必要書類は次の5種類です。□ 特定支出に関する会社の証明書
□ 特定支出に関する明細書
□ 支払いを証明する領収書やレシート・証明書
□ 給与所得の源泉徴収票
□ 確定申告書A
給与所得者の特定支出控除に関する証明書の様式や確定申告の必要書類は国税庁のホームページからダウンロードできます。