暑中見舞いに俳句を入れると一味違う挨拶文になります<文例付き>

知人や親戚など、個人的に送る暑中見舞いはがきの挨拶文は、文例集から定型の挨拶文や近況報告の雛形文章を引用したりコピペして貼り付けるだげでは、味気ないもの。といってもなかなか気のきいた文章は浮かばないし……。というときには、挨拶文の中に、俳句を一句入れると(文例集から引用した定型の挨拶文でも)ガラッと文章の雰囲気が変わって、ひと味違った暑中見舞いの挨拶文になります。たとえばこんな感じ――

 

暑中見舞いに俳句を入れるだけで一味違う挨拶文に

暑中お見舞い申しあげます。梅雨も明け、連日きびしい暑さが続いていますが、いかがお過ごしでしょうか。七月三十日は越谷の花火大会ですね。越谷に住んでいたとき、浴衣姿の美咲ちゃんと涼子を連れて花火大会に出かけたことを夏になると思い出します。< 浴衣着て少女の乳房高からず(高浜虚子) >毎日の猛暑は体にこたえますが、体調にご留意のうえ、くれぐれもご自愛ください。
「浴衣着て少女の乳房高からず(高浜虚子)」の部分が俳句です。引用した句は「浴衣」を季語にした高浜虚子(たかはまきょし)の俳句です。近況報告の内容に関連する季語を使った俳句を一句入れることで、文章に品格が出る、とまではいかないまでもキラッと光る挨拶文になります。

書中見舞いの挨拶文の後半に俳句を入れる

暑中見舞いはがき(ひまわり) 暑中見舞いはがきの挨拶文に俳句を入れる場合、文章の後半に入れると落ち着きます。

暑中見舞いはがきの挨拶文の基本的な構成は【1】暑中見舞いの言葉(暑中お見舞い申し上げます)【2】時候の挨拶【3】近況報告【4】相手の健康を気遣う言葉【5】結びの言葉――というのが一般的てすので、「近況報告」と「相手の健康を気遣う言葉」の間(【3】と【4】の間)に俳句を入れることで、暑中見舞いの挨拶文全体が美しくまとまります。

挨拶文の後半に「ひまわり」を季語に使った俳句を一句入れて暑中見舞いの文章を作ってみました。俳句は水原秋桜子(みずはらしゅうおうし)の句を引用(向日葵の空かがやけり波の群/ひまわりの そらかがやけり なみのむれ)

暑中お見舞い申しあげます。各地の海開きのニュースを見ると、いよいよ夏本番を実感できます。いかがお過ごしですか。我が家の庭では今年もヒマワリが花を咲かせています。来週末には子どもたちを連れて家族四人で海水浴を兼ねて大洗に家族旅行に行く予定です。増田さんご一家は今年も沖縄ですか。楽しみですね。< 向日葵の空かがやけり波の群(水原秋桜子) >暑さに負けず実りある夏休みをお過ごしください。
上記の文例は横書きになっていますが、実際は、縦書きで(適宜改行して全体の見栄えを整えてから)印刷しました。暑中見舞いのはがきは、ハガキ作成ソフトの「筆王」(ふでおう)を使って作ったので、筆王のテンプレート集の中から俳句の季語と同じ「ひまわり」のイラストが背景に載っているテンプレートを選びました(上記画像参照)

暑中見舞いの挨拶文をいきなり俳句から始める

中見舞いはがき(風鈴) 暑中見舞いの挨拶文を(「暑中お見舞い申しあげます」という言葉を使わずに)いきなり俳句から始めるのも印象的な文章になります。その場合は、結びの言葉に「暑中お見舞いを申しあげました。」を使えば、相手にも「暑中見舞い」ということが分かります。

挨拶文の冒頭に「風鈴」を季語に使った俳句を一句入れて暑中見舞いはがきを作ってみました。俳句は与謝蕪村(よさぶそん)の句を引用(風鈴や花にはつらき風ながら/ふうりんや はなにはつらき かぜながら)。文末に「暑中お見舞い申しあげました。」と入れて、暑中見舞いはがきとしての形を整えました。

風鈴や花にはつらき風ながら(与謝蕪村)
夏到来、いかがお過ごしですか。我が家の軒先では二年前に西新井大師の風鈴市で買った江戸風鈴が涼しげな音色を奏でています。もっとも連日の猛暑で風鈴の音も涼しさ半減といったところですが……。今年の夏はどちらにお出かけですか。こちらは仕事で夏休みは取れそうにもありません。秋にのんびりさせていただきます。夏風邪がはやっているようです。体調にご留意ください。夏空の下、暑中お見舞いを申しあげました。
※実際のはがきは縦書き印字です(上記の画像を参照)

暑中見舞いにふさわしい夏の季語と俳句

夾竹桃 暑中見舞いはがきの挨拶文にふさわしい季語と俳句をいくつかご紹介します。季語はなるべく夏の雰囲気が伝わりやすいものを使ったほうが効果的です。また俳句を引用する場合は俳号(はいごう)まだは俳名(はいめい)を添えてください。自分が作った俳句の場合は、この限りではありません。

●花火(はなび)…なかなかに暮れぬ人出や花火待つ(高野素十)●冷麦(ひやむぎ)…冷麦の箸のすべりてとどまらず(篠原温亭)●冷奴(ひややっこ)…冷奴箸に乗りたるしあわせよ(木曽晴之)●麦湯(むぎゆ)…しんしんと麦湯が煮えぬ母の家(島野光生)●氷水(こおりみず)…青春のいつかは過ぎぬ氷水(上田五千石)●心太(ところてん)…清滝の水汲みよせてところてん(小林一茶)●金魚(きんぎょ)…紙の網あやふくたのし金魚追ふ(篠原梵)●水中花(すいちゅうか)…水中花咲かせしまひし淋しさよ(久保田万太郎)

●花氷(はなごおり)…大いなる柱の陰の花氷(高浜虚子)●蝉(せみ)…閑かさや岩にしみ入る蝉の声(松尾芭蕉)●浜木綿(はまゆう)…浜木綿に夜の波白き祭笛(西島麦南)●向日葵(ひまわり)…向日葵に天よりも地の夕焼くる(山口誓子)●団扇(うちわ)…乱れたる団扇かさねて泊りけり(長谷川かな女)●夾竹桃(きょうちくとう)…夾竹桃しんかんたるに人をにくむ(加藤楸邨)

ちなみに俳句の世界では「朝顔」(あさがお)は夏の季語ではなく秋の季語です。「朝顔」を季語にした俳句を使う場合は暑中見舞いではなく残暑見舞いになります。「朝顔の紺の彼方の月日かな」(石田波郷)
暑中見舞い・残暑見舞いに使える夏の季語と俳句一覧

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