4月1日にふさわしい季語と俳句をより抜きました。●桜…さまざまの事思ひ出す桜かな(松尾芭蕉)●桜鯛…桜鯛瀬戸海流に峡いくつ(鷹羽狩行)●四月馬鹿…みごもりしことはまことか四月馬鹿(安住敦)●三鬼忌…三鬼忌のハイポール胃に鳴りて立つ(楠本憲吉)――全24句。手紙やはがきの挨拶文や日記の題材などにご利用いただけます。
桜
桜を詠んだ俳句は数多くありますが、俳句では、花といっただけで桜を意味します。昔は桜といえば山桜(やまざくら)のことを指しましたが、今はソメイヨシノ(染井吉野)が中心になっています。爛漫(らんまん)と咲き誇った満開の桜だけではなく、散りぎわのいさぎよさも愛されています。さまざまの事思ひ出す桜かな(松尾芭蕉)/村遠く離れて丘のさくら咲く(飯田龍太)/まだ醒めぬ山を幾重に遅桜(角川照子)/満開のふれてつめたき桜の木(鈴木六林男)/子を産みしここもふるさと初桜(飯高きみ)/哲学の道の流れに桜かな(鈴木清月)
四月馬鹿
4月1日はエイプリルフール。この日は罪のないウソをついて人をかついだり驚かしたりしてもとがめられないという風習。18世紀ごろ西洋で起こって、大正時代に日本に伝わったと言われています。昭和の時代にはずいぶん流行しましたが、今はすたれつつある感がします。エープリルフールは四月馬鹿(しがつばか)や万愚節(ばんぐせつ)とも呼ばれます。四月馬鹿とはもともとはエイプリルフールに騙された人のことを言いました。近年はグーグル(Google)など世界のメディアや企業がエイプリルフール(4月1日)に、いろいろなネタを仕掛けて世間を楽しませてくれています。たとえば、検索窓にキーワードを入れると、そのキーワードを使った川柳が表示されるとか、グーグルマップでウォーリーをさがせ!とか、グーグルのエイプリルフールネタはとくに有名です。
四月馬鹿…みごもりしことはまことか四月馬鹿(安住敦)/四月馬鹿己あざむくすべ知らず(原コウ子)/黒船に乗りて来るかや四月馬鹿(大谷句仏)/四月馬鹿梅大福の中に種(豊田のびる)/賑やかに見舞客来る万愚節(古賀まり子)/万愚節恋うちあけしあはれさよ(安住敦)
三鬼忌
4月1日は新興俳句の代表的俳人・西東三鬼(さいとうさんき)の命日です。明治33年(1900年)5月15日生れ。昭和37年(1962年)4月1日歿。享年61。代表句には、◇中年や遠くみのれる夜の桃◇水枕ガバリと寒い海がある◇おそるべき君等の乳房夏来る――などがあります。西東三鬼は、常々「自分はエイプリルフールに死ぬ」と明言していたそうで、その予告どおり 4月1日に亡くなりました。友人たちは、三鬼の死を「まことしやかに担がれた」と悼(いた)んだそうです。なお俳句では西東三鬼の忌日は「三鬼忌」(さんきき)「西東忌」(さいとうき)という春の季語になっています。
三鬼忌のハイボール胃に鳴りて落つ(楠本憲吉)/支那街に揺るる焼肉西東忌(秋元不死男)/三鬼忌の明日神戸へ行くといふ(夏秋明子)/三鬼忌の雹の水輪の大粒に(石田波郷)/桟橋にひびく靴音三鬼の忌(片山由美子)/西東忌脱ぎし帽子を膝に置き(森田智子)
桜鯛
桜の咲く季節に獲れるマダイ(真鯛)を桜鯛(さくらだい)と呼びます。桜鯛という種類の鯛がいるわけではありません。桜の咲くころに産卵期を迎えるマダイは体か桜色になるので色もきれいです。花見鯛(はなみだい)とも呼ばれます。刺身のほか兜焼き、あら炊き、潮汁(うしおじる)など、さまざまな料理法で賞味されます。桜鯛瀬戸海流に峡いくつ(鷹羽狩行)/桜鯛かなしき目玉くはれけり(川端茅舎)/鰈らは乞食魚かも桜鯛(ひのそうじょうょう)/さくら鯛瀬戸にあらがふ背を見せつ(佐野まもる)/包丁を取りて打撫で桜鯛(松本たかし)/酢に〆てしろがね光り桜鯛(糸井潮村)
4月1日の日記
4月1日。晴れ。県民健康福祉村の桜が満開を迎えた。去年の日記を見ると満開日は 3月27日になっているので今年は五日ほど遅れての満開である。芝生広場の桜並木の下では家族連れのテントが並び、修景池のほとりでは、地元の自治会であろうか、30人ほどの人たちが、ブルーシートの上で、花見の宴に興じていた。サイクリングロードでは、レンタルサイクルで借りた二人乗り用の自転車に乗った大学生ぐらいのカップルが楽しそうに桜のトンネルを走り抜ける姿が見えた。うらやましいかぎり。県民健康福祉村は春爛漫。4月1日。今日の季語は桜。