4月19日にふさわしい季語と俳句をより抜きました。●山査子の花…さんざしの花に来てゐる鳥の午後(稲畑汀子)●御忌(ぎょき)…なにわ女や京を寒がる御忌詣(与謝蕪村)●御身拭(おみぬぐい)…埃たつうき世の嵯峨や御身拭(蝶夢)●栄螺…さざえ焼く久方振りに炭火して(細見綾子)――全24句。保健だよりや町内会の挨拶文などにお使いください。
山査子の花(さんざしのはな)
山査子(さんざし)。山楂子とも表記されます。中国原産の観賞用落葉低木。4月から5月にかけて白い五弁の花をトゲのある枝の先に咲かせます。葉は紅葉し、秋から冬にかけて赤または黄色い実をつけます。実は甘酸っぱく(渋みのあるものもあります)、漢方では胃腸薬として処方されています。また、実をつけたサンザシの枝は生け花にもよく使われます。さんざしの花にそばかすあらはれし(青柳志解樹)/さんざしの咲きて洋館古りにけり(手塚基子)/さんざしの花にそばかすあらはれし(青柳志解樹)/山査子の日をうつうつとすごしけり(染谷杲径)/山査子や貧農の家に生れし身(細山幸子)/さんざしの花に来てゐる鳥の午後(稲畑汀子)
御身拭式(おみぬぐいしき)
御身拭式(おみぬぐいしき)とは、嵯峨釈迦堂(さがしゃかどう)の名で知られる京都市右京区嵯峨にある清涼寺(せいりょうじ)で毎年、4月19日に催される年中行事。日本三大如来のひとつで国宝に指定されている本尊の釈迦如来像(しゃかにょらいぞう)を白布(晒=さらし)で拭(ぬぐ)い清めていき、このときに使われた白布を身につけると極楽往生できるといわれています。この村の牛は人なり御身拭(高浜虚子)/ならびゐる尼の生徒や御身拭(田畑三千女)/化をこゝに八百年の御身拭(野島無量子)/埃たつうき世の嵯峨や御身拭(蝶夢)/衆生には拝せぬ暗さお身拭(恩地れい子)/御身拭跪座百僧の青つむり(大橋宵火)
法然忌|御忌
法然忌(ほうねんき)とは、浄土宗の開祖・法然(ほうねん)の忌日に行なう法会のことで、御忌(ぎょき)とも呼ばれています。法然忌に参詣することを御忌詣(ぎょうきもうで)といいます。法然は、鎌倉前期・建歴2年(1212年)1月25日に80歳で亡くなりましたが、京都市東山区にある浄土宗大本山の知恩院(ちおんいん)が、明治になって御忌の日程を4月19日に変更してからは、法然忌は4月19日に執り行なわれるようになりました(現在でも1月25日に御忌を行なう寺院もあります)なにわ女や京を寒がる御忌詣(与謝蕪村)/着だをれの京を見に出よ御忌まふで(高井几董)/村々に椎の花かな法然忌(永田耕衣)/嫁入せし娘も多し御忌詣(炭太祇)/よき人の鐘にうかるる御忌詣(森澄雄)/御忌の鉦はじめの間まちまちに(阿波野青畝)
栄螺(さざえ)
栄螺(さざえ)といえば壺焼き。海辺の売店などで「サザエつぼ焼き」の幟(のぼり)が目に止まって近寄ると、磯の香りがしてきて、食べずにはいられません。先端のくるりと巻いたワタの部分は、ほろ苦いので好き嫌いが分かれるところですが、サザエのワタを肴に一杯やるのがたまらないという話もよく聞きます。また、サザエ好きは人間だけではありません。磯の王者と呼ばれるイシダイの好物もサザエ。イシダイ釣りの代表的な餌はサザエ。サザエなしにイシダイは絶対に釣れない、という格言もあるほどです。
壺焼の大疣小疣火が舐むる(阿波野青畝)/変貌す中年さざえ蓋もたぐ(柴田白葉女)/壺焼や汁で一献身で一献(坂口桜花)/海凪げるしづかさに焼く栄螺かな(飯田蛇笏)/はるばると海よりころげきし栄螺(秋元不死男)/さざえ焼く久方振りに炭火して(細見綾子)
4月19日の日記
4月19日。県民健康福祉村ではハナミズキがピンク色の花を咲かせている。花びらに見える部分は、芽やつぼみを包んで保護する小さな葉=苞(ほう)で、中央部分に集まっている小さな雄しべみたいなものがハナミズキの花だ。別名はアメリカヤマボウシ。ハナミズキはアメリカが原産。明治45年(1912)に東京市長がワシントンにサクラを贈ったお返しとして東京に贈られたのがハナミズキだったという話はよく知られている。4月19日。今日の季語は花水木(はなみずき)