4月23日にふさわしい季語と俳句をより抜きました。●薔薇…花びらの落ちつつほかの薔薇くだく(篠原梵)/●暮の春…わが路地の帯のごとしや暮の春(鈴木真砂女)●鰆(さわら)…一匹の鰆を以てもてなさん(高浜虚子)――全24句。町内会のお知らせやPTAだよりなどの挨拶文にお使いください。4月23日は俳人・五十嵐播水(いがらしばんすい)の命日(播水忌)なので、五十嵐播水の俳句も紹介しています。
薔薇(ばら)
バラのふくいくとした香りと美しい花は、愛と美の女神であるヴィーナスの象徴にもなっていて、まさに花の女王(上の写真はさいたま市にある与野公園のバラ園)。バラを歌った曲も多く、日本では、バラが咲いた(マイク眞木)・百万本のバラ(加藤登紀子)・君は薔薇より美しい(布施明)・野ばらのエチュード(松田聖子)・バラ色の雲(ヴィレッジ・シンガーズ)KISSで女は薔薇になる(田原俊彦)などが有名です。花びらの落ちつつほかの薔薇くだく(篠原梵)/咲き満ちて雨夜も薔薇のひかりあり(水原秋桜子)/とほるときこどものをりて薔薇の門(大野林火)/母の忌の後も雨降る薔薇(そうび)かな(岩本躑躅)/潮暮れて薔薇垣なほも波をあぐ(岸風三楼)/薔薇よりも淋しき色にマッチの焰(金子兜太)
暮の春
暮の春(くれのはる)とは、春が終わろうとするころのこと。暮春(ぼしゅん)春の果(はるのはて)春暮るる(はるくるる)春暮る(はるくる)ともいいます。過ぎゆく春を惜しむ気持ちを伝える季題です。ちなみに春の暮(はるのくれ)という季語もありますが、こちらは春の夕暮れのこと。暮の春とは異なります。還俗のあたま痒しや暮の春(高井几董=たかいきとう)/亡き人の短尺かけて暮の春(村上鬼城)/いつも誰か暮春の窓の椅子にひとり(中村汀女)/傘(からかさ)に暮春の雨や宵の街(阿部次郎)/春暮るる雉子(きぎす)の頬の真紅(まくれない)福田蓼汀=ふくだりょうてい/わが路地の帯のごとしや暮の春(鈴木真砂女)
播水忌
4月23日は、俳人・五十嵐播水(いがらしばんすい)の命日です(播水忌)。明治32年(1899年)1月10日生れ。平成12年(2000年)4月23日歿。享年101 。内科医を務めるかたわら句作を続け、師である高浜虚子の花鳥諷詠(かちょうふうえい)を忠実に実践。なかでも海港を詠んだ叙情句を得意とし「港の播水」と評されました。妻の五十嵐八重子と息子の五十嵐哲也も俳人です。下り佇てば遅日の淡路籬の上に/香煙に降りこむ雪や初大師/初空や帯のごとくに離宮道/枯庭を歩きて匂ふもののあり/鶯や旅のあしたの用なき身/燗番(かんばん)のしぐれてゐるや大根焚(だいこだき)/家中が昼寝してをり猫までも/汽車過ぎてもとの山河や天の川/代々の一人娘や雛まつり/古里に父母在す雑煮かな/眉月を引く明星や枯芭蕉
鰆(さわら)
魚偏(うおへん)に春と書くように、鰆(さわら)の旬は春。四月から五月、産卵期を向かえると湾内に入ってくるので、漁獲量が増え、市場にも多く出回るようになります。成長するにしたがって、サゴシ→ナギ→サワラと呼び名が変わる出世魚でもあります。一般的には照り焼きや西京焼きのほか竜田揚げなどにして食べられますが、岡山県周辺では、刺身でも食されます。一匹の鰆を以てもてなさん(高浜虚子)/渦潮の鰆とるぬねかずしれず(佐野まもる)/鰆釣り紀州の鼻は切れて見ゆ(小山白楢)/鰆網しぼりどよめく船に蝶(水野淡生)/汐仏鰆走りをみそなはす(阿波野青畝)/瀬戸内の空青ければ鰆打つ(磯貝碧蹄館)
4月23日の日記
4月23日。久伊豆神社の藤が咲き始めたが、御神水脇ではライラックが甘い香りを放ちながら薄紫色の花を咲かせている。気品のある香りと造形だ。和名はムラサキハシドイ(紫丁香花)。リラとも呼ばれる。リラ(Lilas)はフランス語、ライラック( Lilac)は英語。ライラックの花冠の先は四つに裂けているが、ごくまれに五つに裂けているものがあり、これは「ラッキーライラック」と呼ばれ、恋のおまじないに使われるそうだ。4月23日。今日の季語はリラ(ライラック)