4月27日の季語と俳句。品川の宿に古る寺鐘供養…他

4月27日にふさわしい季語と俳句をより抜きました。●海市(かいし)…軍艦のあとかたもなき海市かな(荒木かず枝)●すかんぽ…すかんぽを噛み過去は過去今は今(後藤比奈夫)●鐘供養…品川の宿に古る寺鐘供養(今井つる女)●薊…わが儘にのびて花さく薊かな(永井荷風)――全24句。絵手紙や町内会の挨拶文などにお使いください。

 

海市(かいし)

海市 海市(かいし)とは蜃気楼(しんきろう)のこと。晩春のおだやかな日、海上などで冷たい空気の上に暖かい空気が流れ込んだりすると、太陽の光線が屈折し、海上で船がさかさまに浮き上がって見えたり、こつぜんと楼閣のような建物や立像が現れたりします。

地方によっては、山市(さんし)・狐館(きつねだち)・狐棚(きつねだな)・貝櫓(かいやぐら)・蜃楼(しんろう)などの名で呼ばれています。日本では富山湾の蜃気楼が有名。富山湾に浮かぶ蜃気楼にちなんだ「蜃気楼」という日本酒もあります。

海市遠く辺波(へなみ)はしじに白かりき(森川暁水)/雑草を踏んで海市もあらざりき(吉岡禅寺洞)/海市消ゆ恍惚として子守唄(八木三日女)/魂のあそびや海市ひろがりつつ(小川双々子)/海市まで大風呂敷を持ち歩く(櫂未知子)/軍艦のあとかたもなき海市かな(荒木かず枝)

すかんぽ

すかんぽとは、酸葉(すいば)のこと。タデ科の多年草で、道ばたや野原に自生している雑草です。春になると、赤紫色を帯びた酸味のある若芽が萌え、昔は、茎や葉を子どもたちが噛んで楽しんだりしました。若芽は、茹でて酸味をのぞいて、あえ物にしたりもします。

すかんぽのひる学校にゆかぬ子は(長谷川素逝)/すかんぽや鼻に汗ばむ母なりき(広瀬一郎)/酸模噛む心置かむに雲遠く(岡本眸)/すかんぽの見る間に刈られゆきにけり(星野立子)/すかんぽを噛み過去は過去今は今(後藤比奈夫)/すかんぽの畦に休むやかきつばた(細見綾子)



 

鐘供養

鐘供養(かねくよう)とは、和歌山県日高川町にある天台宗の寺院・道成寺(どうじょうじ)で毎年4月27日に行なわれる梵鐘(ぼんしょう)供養のこと。道成寺が起源となって始められたものですが、東京都品川区にある真言宗醍醐派の寺院・品川寺(ほんせんじ)の鐘供養も有名です。

畑打や木の間の寺の鐘供養(与謝蕪村)/花にやや遅れたれども鐘供養(高浜虚子)/品川の宿に古る寺鐘供養(今井つる女)/紀の海の沖波ひかれ鐘供養(成瀬櫻桃子)/向山の高みにさくら鐘供養(森 澄雄)/悪相の僧が仕切りて鐘供養(大牧広)

薊(あざみ)

薊 薊(あざみ)は、キク科アザミ属の植物の総称で、羽状に裂けた葉や茎にトゲがあり、さわると痛い思いをします。花は淡紅色と紅紫色ですが、まれに白い花も見られます。ノアザミ・フジアザミ・モリアザミ・オニアザミなど種類が多く、日本では100種以上あるとされています。

花の形が女性の使う眉刷毛(まゆはけ)に似ていることから「眉つくり」「眉はき」の別名もあります。また、地方によっては、春先のアザミの新芽は味噌汁の具や天ぷらなどにして食べられています。

くもり来しひかりのなかの薊かな(久保田万太郎)/花薊夕日の前を人馬ゆく(柴田白葉女)/一輪の薊を持ちし手が疲る(山口波津女)/透く海にふるるばかりの花薊(沢木欣一)/ゆく春やとげ柔らかに薊の座(杉田久女)/わが儘にのびて花さく薊かな(永井荷風)

4月27日の日記

マーガレット

4月27日。セブンイレブン越谷谷中町4丁目店の裏手にある篠宮家の畑でマーガレットが咲いていた。花菖蒲も見頃を迎えているので、ついつい目先は紫色の花菖蒲に向いてしまいがちだが、なかなかどうして白い花を咲かせているマーガレットも美しい。ハナアブたちがマーガレットの花々を飛び交っている。篠宮家の庭先の藤棚では藤の花が満開だ。主屋の縁側では猫が気持ちよさそうに昼寝をしている。晩春ののどかな光景だ。4月27日。今日の季語はマーガレット

風白しマーガレットを野に置きて(稲畑汀子)

4月25日の季語と俳句4月29日の季語と俳句

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