4月29日にふさわしい季語と俳句をより抜きました。●林檎の花…たたずみて林檎の花の四方の中(富安風生)●昭和の日…昭和の日あせし写真の原節子(小野寺真弓)●残雪…残雪や雲に消えゆく伊賀の道(加藤楸邨)●白魚…あけぼのやしら魚しろきこと一寸(松尾芭蕉)――全24句。保健だよりや自治会の挨拶文などにお使いください。
林檎の花
林檎(りんご)は、春、白色のサクラに似た花を咲かせます。つぼみは濃い紅色で、花は、白い五弁の花を五、六個ずつかためて咲かせます。「林檎の花」は俳句では春の季語。「花林檎」(はなりんご)とも詠まれます。果実の「林檎」は秋の季語になります。みちのくの山たゝなはる花林檎(山口青邨)/林檎咲きたちまち白し林檎山(辻桃子)/たたずみて林檎の花の四方の中(富安風生)/野も山も一気に覚めて花林檎(青柳照葉)/白雲や林檎の花に日のぬくみ(大野林火)/屋根石を浮かべて四方の花林檎(田中素耕)
昭和の日
4月29日。64年に及んだ昭和時代を記念する国民の祝日。もとは昭和天皇の誕生日を寿ぐ「天皇誕生日」でした。昭和64年(1989)1月7日の昭和天皇崩御により、平成元年(1989)以降の4月29日までは「みどりの日」という名称の祝日に改められ、平成19年(2007)から「昭和の日」になりました。国民の祝日に関する法律(祝日法)では「激動の日々を経て復興をとげた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす」と記されています。昭和の日あせし写真の原節子(小野寺真弓)/志ん生に聴き入る夜も昭和の日(大谷朱門)/遺言の下書終へて昭和の日(阿部もとみ)/思出を語り伝へむ昭和の日(野田ゆたか)/昭和の日ひがな一日戦史読む(高橋泉也)/忘れ得ぬ戦の記憶昭和の日(山田和江)
残雪
残雪(ざんせつ)とは、春になっても山や岩陰に残っている雪のこと。冬場、昨日降った雪が道ばたや庭の隅に残っているものではなく、冬の積雪が春になってもそのまま解けずに残っている光景をいいます。北国や高い山では春の終わりになってもなお残雪を見ることができます。「残る雪」「雪残る」「雪の名残」(ゆきのなごり)などの季語でも詠まれます。また、山の雪が春になって解けはじめ地肌がまだらに見えてきた光景は「雪間」(ゆきま)といいます。雪残る頂(いただき)一つ国境(正岡子規)/残雪の尾根星ぞらの若々し(千代田葛彦)/一枚の餅のごとくに雪残る(川端茅舎)/滝みだれ大残雪にひびき落つ(水原秋桜子)/残雪光袋に透いて菓子の影(中村草田男)/残雪や雲に消えゆく伊賀の道(加藤楸邨)
白魚
白魚(しらうお)は、体長10センチほどの透明な魚で、可憐な黒い目が特徴。「白魚のような指」にたとえられるように、姿が美しく、味も上品でたんぱくなので、吸い物・てんぷら・酢の物などにして食べられます。産卵期は二月から四月。かつては隅田川が名所として知られ、白魚網舟でにぎわいましたが、河川の汚染によって白魚は絶滅。現在は、島根県の宍道湖(しんじこ)や茨城県の霞ケ浦などが白魚の産地とされています。なお同じ時期に旬を迎える似たような小魚のシロウオ(素魚)はハゼ科で別の魚です。
白魚をつかみ量(ばか)りの男の手(中村汀女)/白魚の小さき顔をもてりけり(原石鼎)/白魚のみごもりゐるがあはれかな(鈴木真砂女)/ふるひ寄せて白魚崩れんばかりなり(夏目漱石)/あけぼのやしら魚しろきこと一寸(松尾芭蕉)/白魚やながらうごく水の色(小西来山)
4月29日の日記
4月29日。県民健康福祉村の敷地内を横切る末田用水の飛翔橋付近で野茨が白い花を咲かせている。ウォーキングコースから少し横にはずれたところなので、野茨の花に気がつく人はほとんどいない。野茨の花を見ているのは飛翔橋脇の柵に止まっているカラスぐらいか(笑)。修景池近くではエゴノキが白い花を咲かせているが、こちらはウォーキングコース沿いなので、歩く足を止めて観賞したりスマホで撮影している人も見かける。ということで、4月29日、昭和の日。今日の季語はエゴノキではなく野茨にした。