埼玉県春日部市にある宝珠花神社の歴史と御祭神をはじめ境内の風景を写真とともにご案内します。宝珠花神社の読み方は「ほうしゅばなじんじゃ」。住所は埼玉県春日部市西宝珠花77。境内には富士山を模した富士塚があり頂上に浅間大神が祀られています。富士塚の前にある鳥居では富士山信仰の活動を示す「三國第一山」(さんごくだいいちさん)と彫られた江戸後期の銅板製の扁額(へんがく)も見ることができます。
宝珠花神社の歴史と御祭神
宝珠花神社(ほうしゅばなじんじゃ)は、明治40年(1907年)12月に、浅間社・天神社・香取社・八雲社を合祀して、社号を宝珠花神社と命名されました。各社の創立年代は不詳。祭神は、木花開耶姫(このはなさくやひめ)菅原道真公(すがわらみちざねこう)経津主命(ふつぬしのみこと)素戔男尊(すさのおのみこと)の四柱。昭和22年(1947年)に発生したカスリーン台風で江戸川が決壊。宝珠花神社の鎮座する西宝珠花(にしほうしゅばな)地区は甚大な被害を受けました。昭和27年(1952年)に始められた江戸川堤防の改修工事に伴い、昭和28年(1953年)6月に、元の場所から西方約300メートルの現在地に、拝殿などそのままの状態で移動されました。
なお移転したのは寺社だけではありません。250戸の家屋や役場・学校などの建物を解体しないで水平移動させる曳家(ひきや)という手法を使って、そのままの状態で町ごと現在の西宝珠花地区に移転されました。
境内社
稲荷神社。江戸川の河岸場(かしば)としてにぎわっていた西宝珠花地区の商売繁盛を願って「河岸方稲荷」(かしかたいなり)として建立されたと伝えられています。建立年代は不詳。老朽化に伴い、平成13年(2001年)4月に石造りのお社に改築されました。産土様(うぶすなさま)。産土様とは、その土地の守り神のことをいいます。
境内の風景
全景。神社の裏手に江戸川の土手が見えます。江戸川を背に西宝珠花(にしほうしゅばな)の町全体を見守るように鎮座しています。境内には滑り台・鉄棒・ブランコなどの遊具も見られます。鳥居。石で作られた石鳥居。社号額には「宝珠花神社」と刻されています。鳥居の横にある石灯籠は江戸時代後期・文化5年(1808年)造立。
合祀記念碑。明治40年(1907年)12月9日に、浅間社・天神社・香取社・八雲社の四社を合祀して宝珠花神社を創建したことを記念して寄贈された石碑。
大々神楽(だいだいかぐら)奉納記念石碑。明治29年(1896年)3月30日造立。
手水舎(ちょうずや)。平成29年(2017年)6月新築。手水鉢(ちょうずばち)は江戸時代末期・文久2年(1862年)正月(1月)25日建立。
百度石(ひゃくどいし)。百度石とは、百度参りをするときの標識として立てられている石のこと。百度石の上には石で彫られた猿が乗っています。
本殿。天満天神座像と随身像(ずいじんぞう)、正一位稲荷大明神の神璽(しんじ)と嘉永3年(1850年)銘の白狐像(しろぎつねぞう)などが納められています。本殿の裏手に見えるのは江戸川の土手。狛犬は幕末の元治2年(1865年)正月造立。
本殿前。本殿の横手に見えるのは富士塚(ふじづか)です。
宝珠花神社扁額
富士塚の手前には石鳥居があり「三國第一山」(さんごくだいいちさん)と彫られた扁額(へんがく)が掲げられています。「三國第一山」とは、日本(大和)インド(天竺)中国(支那)三国の中で、もっとも美しい山、という意味。山は富士山のこと。かつてこの地は富士山信仰が盛んだったことがうかがわれます。この銅板製の扁額は、江戸後期・天保4年(1833年)に、地元・西宝珠花(にしほうじゅばな)の氏子(うじこ)たちが富士山登山121回を記念して奉納したもので「宝珠花神社扁額」(ほうしゅばなへんがく)として春日部市の有形文化財に指定されています。
富士塚
宝珠花神社のみどころは境内にある富士塚です。富士塚とは、富士信仰(富士講)のために富士山をかたどって造られた塚のこと。頂上に浅間大神(あさまのおおかみ)が祀られているほか、随所にさまざまな石碑や社(やしろ)が見られます。この富士塚は、江戸時代に富士講(富士山信仰)の地元信者が造ったもので(※)、その頂上に祠(ほこら)を祀ったのがはじまりと伝えられています。地元では浅間様(あさまさま)と呼ばれています。(※)造立年代については不詳。おそらく江戸後期と思われます。
鳥居をくぐって浅間様を参拝。御神灯(ごしんとう)の先に石段の登山道が見えます。
聖徳太子と彫られた石碑
登山道。右手に「不士森稲荷大神」と彫られた石碑が見えます。
小御獄大神(こみたけおおかみ)と彫られた石碑
二十三夜塔(にじゅうさんやとう)
「五合目」と刻された石灯籠。富士塚の五合目の位置に建てられています。
烏帽子岩(えぼしいわ)。頂上付近にあります。
頂上。浅間大神と刻された石碑が建てられています。幕末・万延(まんえん)元年(1860年)造立。頂上からは江戸川の土手が一望できます。
富士塚の頂上から見下ろした宝珠花神社の本殿と境内
神社の横を通る次木杉戸線(千葉県道・埼玉県道183号)から眺めた富士塚の全景
年中行事
宝珠花神社では、元旦祭をはじめ初山(はつやま)や天王様(てんのうさま)などの年中行事が催されます。初山は、毎年6月30日と7月1日に新生児の成長を願って富士塚に参拝する風習。天王様は7月に行なわれる夏祭りで神輿(みこし)が町内を練り歩きます。宮司さんは祭礼以外は常駐していません。お祓いや地鎮祭・上棟式などに関することは宮司さんに電話で確認してください(048-748-0463)。電話は深夜や早朝など迷惑になる時間帯は避けてください。
トイレ
トイレは境内に簡易トイレが1基あります(上の写真)。あまりきれいとはいえません。神社から200メートルほどのところに大凧公園(おおだここうえん)の多目的トイレがあります。駐車場
専用の駐車場はありませんが、鳥居前に車を駐められるスペースがあります。地図
住所とアクセス
宝珠花神社の住所は 〒344-0102 埼玉県春日部市西宝珠花77 。住所の読みは「さいたまけん かすかべし にしほうしゅばな」。車でのアクセスは東京から国道4号で約1時間。圏央道幸手インターチェンジから約20分、東北自動車道岩槻インターチェンジから約25分。公共交通機関では、東武伊勢崎線(スカイツリーライン)春日部駅東口から朝日バス・関宿中央ターミナル行きに乗って~乗車時間は約30分~大凧公園入口(おおだここうえんいりぐち)バス停で下車して徒歩約3分です。バスの本数は1時間に2本前後。